minofoto and miscellaneous notes

ごく気まぐれに,書きたいことを適当に書いています。本当の話かもしれませんし,フィクションかもしれません。

アルゴくそくらえ


NEX-5 / E18-55 mm F3.5-5.6 / 55 mm

映画「アルゴ」がアカデミー賞を受賞したそうです。確かにちょっと興味深い映画でした。アメリカによるイランへの内政干渉、それに命がけで抗議するイランの人たち、それに対して国益のために自国の大使館員までも切り捨てようとするアメリカの官僚たち、そして利害で動く政治の中枢が描かれています。

それにも関わらず、この受賞には、イランからの反発もあるようです。
反イラン映画「アルゴ」のアカデミー賞受賞

この批判では、映画の内容が事実と異なることが指摘されています。

この映画の質はともかく、その中で扱われているのは、歴史上の明白な虚偽であり、ベン・アフレック監督演じた当時のCIA諜報員トニー・メンデズと、当時テヘランに駐在していたケン・テイラー・カナダ大使の抗議の声を引き起こしています。映画「アルゴ」の虚偽的な内容とは逆に、アメリカは、これらの外交官らのテヘラン脱出には、決定的な役割を果たしておらず、カナダ大使が自らの責務に反する措置として、偽造のカナダ旅券を外交官らに渡し、彼らのテヘラン脱出の便宜をはかっているのです。

事実と異なるのかどうか、私は知らないので、これについては何とも言えません。しかし、「アルゴという反イラン的な映画のアカデミー賞受賞は、改めて、ハリウッドにおいて政治が芸術よりも優位な立場にあることを示しました。」というくだりは、私の感じたこととは全く逆です。この映画は、アメリカの政権の中枢であるワシントン、東海岸に対して、反権力的な西海岸のハリウッドの人たちが、「人命救助」という点においてだけで命がけの協力をするというもので、そのような立ち位置に対する好悪の入り交じった複雑な感情が「アルゴくそくらえ」という自虐的なキーワードに込められていると感じました。これこそがアメリカという国の複雑な成り立ちを反映しているようです。批判を許す自由の国であることを示していると同時に、アメリカという国自体への批判でもあると感じました。あくまでアメリカ人によるアメリカ人のための映画であって、外国人がこの映画を見てアメリカを好きになるとか、アメリカに憧れるようなものではないと思います。

その一方で、娯楽映画としての興業を成立させるために、アメリカ人のヒーローがアメリカ人を救出するというお決まりのパターンをとっており、そこが上の批判につながるものだと思いますが、そのようにしないと映画を売れない自分たちへの自虐的な批判も込めた「アルゴくそくらえ」なんだと思いました。

そういう意味で、なかなか興味深い映画でした。