minofoto and miscellaneous notes

ごく気まぐれに,書きたいことを適当に書いています。本当の話かもしれませんし,フィクションかもしれません。

選挙、血液型

昨日はサイクリングから帰って、投票に行き、池上彰の選挙速報を見ていました。なかなか鋭くて面白いですね。ここまで根がしっかりとしつつも過激な番組が作れるのはテレビ東京だけのような気がします。池上さんはもちろんですが、裏方となるスタッフも良い働きをしていそうです。地方のローカル局にはこれほどの番組を作るだけの収益も人材もおらず、全国ネットのテレビ局は組織が多すぎてこれだけ柔軟な番組作りができないのでは、と想像してしまいます。もちろん根拠のない妄想ですが。

池上さんがやっているのは自分の意見の押し付けではなく、選挙についてどのように候補者を見定めるか、候補者がどういう背景で何を考えているか、有権者が自分の頭で考える材料や、考え方そのものを解説してくれています。それがすごいことです。


もう一つ、こんな変なものを読んでいました。選挙や池上さんと関係ないように見えますが、実は関係があります。

ABOFANへの手紙(前半)

血液型で人の性格が決まる、いやそんな馬鹿げたものは相手にするに値しない、という永遠に交わらないような議論を、少しだけ真面目に交わらせた書簡集です。ものすごく長いので、途中は飛ばし読みをしてしまいましたが、渡邊さんという心理学者と、血液型心理学を信じるあるウェブサイト運営者とのやりとりが公開されているものです。

この書簡集では、心理学者である渡邊さんが統計への誤解や、性格とは何か、ということについて、素人と根気強く対話を交わす様子を追うことができます。最初は全く話が噛み合わないように見えたのですが、後半は驚くべきことにそれなりに対話が噛み合っているように見え、曲がりなりにも結論に到達しているように見えます。

この最初の議論の噛み合わなさを見て、よくあるパターンだ、と思ってしまいました。普段一見まともに仕事をしている人とでも、こういう感じで、まともな議論が通じなくなることがあります。そういうときは、ものすごく大変な割に得られるものがあまりないので、私などはたいてい頭を抱えて退散するのですが、きちんと共通の土台を確認してゆくと、こうやって議論ができるのか、しかも相手のレベルも(少なくとも見かけだけでも)上がってくるのか、ということに驚きました。


池上さんも、政治について同じようなことをするために仕事をしているのでしょう。適切な材料、考えるための枠組みをきちんと提供すること、一人一人が自分の頭で考える環境を整えること、それを番組という枠の中でやっている。ドブ板選挙と言われるものは、みんなを熱狂させて考える力を削ぎ、雰囲気の中で自分に投票させるという方法でしょう。そういう事実を情報と理屈で明らかにし、自分の頭で考えなさいよ、という枠組みを提供しているのです。
上で紹介した対話のように、枠組みをきちんと与えられれば、人はちゃんと考えられるようになる(ことがある)、ということは、希望です。池上さんが偉いのは、(私のようにすぐ逃げ出すのではなく)この希望を信じて行動できていることかもしれません。

(もちろん与えられた枠組みが間違っているかもしれませんし、自分の頭で考えることが善いことだ、というのは一つのイデオロギーにしかすぎないのですが、そこまで言うのは、あまりよくないですね。)

山本太郎のような人が東京で当選すること、池上さんが根気強く解説を続け、その視聴率が話題になること、どちらも今の時代の一つの側面なのでしょう。