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minofoto and miscellaneous notes

個人的な備忘録ですが、たまに広く読んでもらいたい記事を書くこともあります。記事は随時修正したり追記したりすることがあります。

雲取山〜石尾根

秋の週末、予定が変わって突然ぽっかり一日空いてしまったので、久しぶりに東京都最高峰の雲取山 (標高 2017.1 m) に出かけました。一番人気は鴨沢からの往復ですが、それではあまりに芸がないので、長い石尾根を奥多摩駅まで下ってみようと日の出前に出発。

奥多摩駅朝7時発のバスは満員でした。鴨沢でバスを降りるとトイレに行列ができていましたが、迷うことなく登山道へ。歩いても歩いてもたくさんの人。もっと早いバスか、それとも自家用車で来た人たちでしょうか。上から下りてくるのは小屋に泊まった人たちでしょうか。

10時には七ツ石を巻いて石尾根に取り付き、11時過ぎには山頂へ。快晴の山頂は人でごったがえしていました。家族連れや若いカップル、女性だけのパーティーも多く、山ガールが増えているというのは伊達ではないようです。私はひとりでお湯を沸かして昼食をとり、雲取山荘の方へ歩いてみます。小屋の水も豊富で、たっぷりと汲ませてもらい、10歳若返ってきました (^^;;

小屋の脇の田部重治の記念碑を拝見してから、山頂を巻いて石尾根に戻る道をたどりました。人の多い稜線とはうって変わって奥多摩らしい静かな原生林の小道です。笹原に差し込む木漏れ日が美しく、苔も青々としています。


巻き道はちょうどヘリポートの近くで石尾根に合流します。ヘリポート付近の木陰で一休みしていると、猟友会と書かれたオレンジのベストを着た人たちがざわざわしています。「これからヘリが来るので、今のうちにここを通過してもらえますか。危険なので。」これはチャンスと、カメラを向けます。こんな間近でヘリを見る機会もめったにないので、ちょっと興奮します。ほかの登山者も一斉にカメラを向けていましたし、後ですれ違った人にも、「あのヘリは何だったんですか?」と聞かれたりしました。ヘリは猟師たちを乗せて下山していったと思ったら、またすぐに戻ってきてピストン輸送していたようです。奥多摩では、鹿の食害が問題になっているようなので、その調査でしょうか。さすがにこんな登山者の多い時期に猟はしないでしょうし、銃声も聞こえませんでした。

七ツ石を過ぎると、またまた静かな奥多摩の道。トレイルランナーに追い抜かれたほかは、人の気配がほとんどありません。短い秋の陽がだんだん傾いてくるのが気になり、最初は石尾根をたどってピークを踏むつもりでしたが、巻き道を下ることにしました。一人で歩いていると、感覚が研ぎ澄まされてきます。斜面の上で物音がしたと思ったら、キジでした。
熊が出たら困るなぁと鈴を鳴らしつつ歩いていると、鷹ノ巣山の巻き道の谷間で、森全体がざわざわしているのに気付きました。気をつけてあたりを見回すと、谷の下へ母子の猿が下ってゆくのが見えました。斜面の上からもざわざわした音が聞こえます。猿の群れの真ん中に入ってしまったのでしょう。熊鈴を一層大きな音がするように手に持って振りながら歩くと、斜面上側のすぐ近くの倒木の上に、大きな貫録のある猿がこちらを見下ろしていました。ボス猿でしょう。女子供を先に谷の下に逃がし、しんがりで見張りをしていたに違いありません。カメラを向けたいところでしたが、攻撃と取られるかもしれません。さすがにひとりでボスザルと対決する勇気はありません。警戒しつつ、目を合わせないように鈴を鳴らしながら通過。猿たちは食事中だったのか、それとも夕刻でねぐらに向かって移動中だったのかな。邪魔してごめんね。

猿の家族と自分を重ね合わせたのか、ふと、子供の頃の光景が思い出されました。夕方遊び疲れて帰って来ると、母が薄暗くなった夕暮れの台所でまな板の音をさせています。居間の隅で祖母が大相撲を見ている後ろに座っていた光景。続いて、いろんな思いが去来します。こういう時間のためにここに来たのかもしれないな、とふと思いました。

山々の稜線はまだ夕日に輝いているのに、尾根の陰に入り込んだ途端に足下に不安を感じるほど暗くなりました。目を慣らしながら足下に気を付けて歩きます。せっかくなので、巻き道から外れて六ッ石山への道を上り、山頂から沈みゆく夕日を眺め、休憩して行動食をとりました。あとは下るだけ。急いだせいか、靴を修理したばかりで合わなかったせいか、足が痛くなってきました。

山道が終わり舗装された林道に下りて、懐中電灯を手に奥多摩駅への近道がないかとうろうろしていたところ、夜道を一人で歩く人がいたので道を尋ねたら、彼は六ツ石から下ってきた若い学生さんでした。二人で山談義をしながら電車で帰宅。家に帰ったら、登山靴を脱ぐのも苦痛なほど足が痛かったのは、靴のせいばかりではなく、一日で踏破するにはちょっと無理な距離を歩いたからでしょう。普通は雲取山荘で泊まるか、どこかでテントを張るのがお勧めです。