minofoto and miscellaneous notes

ごく気まぐれに,書きたいことを適当に書いています。本当の話かもしれませんし,フィクションかもしれません。

閉められた扉

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読みました。
「村上さんのところ」として著者が読者のメールに答えるという企画をやっているのを見て、ふと思い出して古本屋で購入しました。ベストセラーとして一時期話題になっただけあって、よい状態の本がひどく安い値段で売られていました。

鼻先で扉がぴしゃりと閉められ、もう扉は開かないし、なぜそうなったかもわからない。そういう話から始まる小説です。

Beyond the gate

小学校の体育で、よく野球をやりました。実際はソフトボールだったのかもしれませんが、「野球」と呼んでいました。しかし野球のルールを教わったことは一度もありません。だからみんなきっと変なこともやっていたのでしょうが、しかし学年が進むと皆がだんだん複雑なルールを覚えるようになりました。私はそれについてゆけなかったので、ボールを打って1塁にたどり着いたのに訳も分からずに(自分が知らないルールのせいで)アウトにされることもあり、もやもやしたりして野球は嫌いになりました。

家ではテレビで野球を見る習慣のある人がいなかったので、親父と一緒に野球を楽しんでいる同級生にはどうあってもかなわなかったのでしょう。野球を見ない親父が悪いわけでもなく、ルールを教えない学校の先生が悪いわけでもない。理屈では文句の言いようもあるでしょうが、そういうことにはどうしようもないことがたくさんあります。ただ、人生のいろんな局面でも、ルールがわからないままゲームをせざるを得ないこと、ルールがわかったときにはもう試合が終わっていることは多々ありますね。

そんなことを思い出しました。

村上春樹ファンというわけではありませんが、しかし「多崎つくる」はちょっと味わい深い話でした。