minofoto and miscellaneous notes

ごく気まぐれに,書きたいことを適当に書いています。本当の話かもしれませんし,フィクションかもしれません。

連休中の読書「終わらざる夏」

この連休は、溜まった読みたい本を消化する時間にしようと決めていました。ひとつは浅田次郎作「終わらざる夏」
終わらざる夏 上終わらざる夏 下

この作品は、「ラジオ版学問ノススメ」 http://www.jfn.co.jp/susume/Podcast で聞いて、是非とも読んでみようと思っていたものです。浅田次郎といえば「地下鉄に乗って」「蒼穹の昴」のようなドラマチック、かつ時空を飛躍する SF 的な展開を楽しめる作品が多いのですが、これは太平洋戦争の終戦時に何か起きたかを緻密に追った、地味なドキュメンタリーのような作品です。

なぜ、これをあえて今読もうと思ったのかというと、やはり震災のせいです。震災が戦争を思い起こさせたこと、そして震災の救援活動や原発事故の処理の不手際には、いろいろなところで、日本軍の敗戦の原因や敗戦処理と似ていると指摘されていることです。

この小説は、兵站の軽視とは、戦略の失敗とはどういうことか、机上の戦略とリアルな現場の距離について、実に具体的にイメージさせてくれる小説でした。浅田氏は自衛隊時代の経験が良かったと言うだけあって、ややもすれば軍隊が美化されすぎているのではないか、と感じる部分がありますが、しかし、「戦争を繰り返さない」「平和憲法」というイデオロギーに消化されてしまった戦争のリアルな現実を、もう一度考え直してみるには実に良い機会でした。

大戦、そして震災の両方の経験を昇華し、新しい時代を作っていく必要があるのではないか、と漠然と思います。