minofoto and miscellaneous notes

ごく気まぐれに,書きたいことを適当に書いています。本当の話かもしれませんし,フィクションかもしれません。

赤と黒

カメラのレンズとしてコシナの NOKTON classic 40 mm を使っていて、これはかなり気に入っているのですが、ひとつだけ不満があるのは、最短撮影距離が約 70 cm と遠いこと。物を大きく写したいときに、近づきすぎるとピントが合いません。といっても、別にマクロレンズを持ち歩くのは荷物が増えるのであまり嬉しくないな、とクローズアップレンズを買いました。

夜のチューリップ

レンズ先端にねじ込むだけで、近づいてもピントが合うようになり、大きく写せます。試しに夜の公園のチューリップを撮ってみるとなかなか良い感じ。夜の写真は、デジタルカメラが頑張りすぎて、まるで昼間であるかのような明るさと色に補正してくれるので、RAW データを元にパソコンで夜っぽく現像しなおしてみました。RAW データの現像*1には、RawTherapee というフリーソフトウェアを使っています。

この現像という作業、なかなか難しいこともあります。よくあるのが、赤色が飽和してしまってうまく再現されないことです。先日、赤色をきれいに出すためには黒レベルを上げればよい、という解説を読んでやってみました。なるほど、飽和せず色がちゃんと出るようになりますね。

ゼラニウム ショーケース

そういうテクニックが使い物になることだけじゃなく、その事実そのものにいたく感心してしまいました。


光に赤、緑、青の3原色があるのは、ヒトが目で色を感じるとき、それぞれの色を感じる3種類の感覚細胞があるからです。この中でもヒトの赤色の感覚は、もとは緑色の感覚から進化して派生したもので、いわばオマケとも言えます。

赤色はオマケなので、緑や青ほど明るく見えませんし、いわゆる色盲で赤色が見分けられない人も多いです。赤色が見えない人にとっては赤は黒っぽく見えるそうです。だから大ざっぱには、赤は比較的、黒と近い色と言ってもいいですね。実際、目立たせようとして赤を使い、かえって見辛くなるというのは、よくある落とし穴です。

ということで、赤を美しく見せるためには黒レベルを上げればいい、という単純な(だけど奥深い)事実に、なるほど感心した次第です。

現像はときに難しいのですが、そのおかげで、こうして光と感覚について考えられるのは楽しいことですね。

*1:RAW というのはカメラが撮った生のデータで、そこから色の調整などをして目で見てわかる jpg などの画像に変換することを「現像」と呼びます。昔でいうとネガフィルムに相当する RAW データからプリントを作る作業と似ているので、と書いても、カラーネガフィルムを知っている世代でも、プリントするために色調整が必要ということを知る方は多くないと思うので、あまり良い説明ではありませんね...